大木 淳之

光分解性成分の鉛直プロファイルから読み解く表層混合層の構造

研究概要

海洋の一次生産に関する物質循環研究では、亜表層から表層混合層への栄養塩供給を調べることが大事なテーマの一つとされます。海洋の混合状態を物理観測により調べることで、下層からの栄養塩供給量が求められます。そして、表層における栄養塩消費を生物化学観測により調べることで、栄養塩循環の状況が明らかになります。本課題では、海洋の混合状態を化学観測により明らかにして、下層からの栄養塩供給の状況を検証する手法を加えることに挑戦します。そこで、海水中で光分解する化合物の鉛直プロファイルに着目しました。その鉛直プロファイルが時系列で変化する様子を捉え、表層混合層の構造と形成履歴を明らかにし、下層からの栄養塩供給とそれにより維持される一次生産を調べる手法を開発します。

海水には、生物活動に由来する有機ガス成分が溶けています。ヨウ素を含む有機ガスの中には、太陽光に曝されると分解するものがあります。ジヨードメタン(CH2I2)は可視光の青色より短い波長、クロロヨードメタン(CH2ClI)は紫外線のUV-Aより短い波長で分解します。海洋で鉛直的に海水を採取して、これらの化合物濃度を測定してみると、ジヨードメタンは表層混合層内では著しく濃度が低く、クロロヨードメタンは混合層内でも比較的濃度が高いことがわかりました。また、濃度極大を示す深度については、ジヨードメタンよりもクロロヨードメタンの方が数メートルだけ浅いところにあるのです。海洋に入り込んだ太陽光は深度とともに減衰します。紫外線は表面付近で急速に減衰しますが、青色の光は深いところまで到達します。これら光分解性を有する化合物の鉛直プロファイルは、光分解特性と光スペクトル、混合状態で決まるのです。したがって、有機ヨウ素ガス濃度と光スペクトルの鉛直プロファイルを調べれば、混合状態の履歴を読み解くことが期待できるのです(図1参照)。北太平洋の亜寒帯沿岸域と亜寒帯循環域において、時系列で海洋観測を実施します。

図1大木

 

 

 

 

 

 

 

 


大木顔写真

 

研究代表:

大木淳之 北海道大学大学院 水産科学研究院 海洋生物資源科学部門 海洋環境科学分野 准教授

http://hokusui-ocean-biogeochemistry.jimdo.com/

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  野村大樹

連携研究者:

野村大樹 北海道大学大学院水産科学研究院 海洋環境科学分野 助教

http://hokusui-ocean-biogeochemistry.jimdo.com/

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