纐纈 慎也

海洋広域観測網による等密度面上塩分分布を利用した混合分布推定と長期変動の評価

研究概要

概要:乱流拡散の過程は、海洋循環、熱・物質輸送を本質的に明らかにする上で重要な要素の一つである。近年、乱流の直接的な観測手法の開発により、混合現象の時空間的な偏在性が明らかになりつつある。一方で、広域での混合効果の評価については、数値モデルによるものが多く、観測に基づく手法による例は少ない。近年の海洋高密度水温塩分観測により詳細に捉えられるようになってきた(例えば図1)大規模水塊分布とその変動は、海洋亜表層での混合過程に影響を受けるため、分布・変動の正確な把握には混合過程と整合的な見積もりが必要であると考えられる。そこで、観測で捉えられる分布・変動と整合的な循環場、混合分布を、変化は小さいものの空間スケールが比較的大きい等密度面上での変動を記述する簡略化された方程式のもとで間接的に推定し、より直接的な乱流観測や、理論、モデルの結果と比較可能な分布を提示することが本研究の目的である。その上で、北太平洋海盆スケールでの循環・水塊変動を海洋中の混合効果を考慮して記述することで、海洋循環・混合変動の環境変動に対する評価を行うことを目指す。本研究で得られる混合分布は、物質がより保存的に振る舞う等密度面上での微小な時空間変動に依っており、計画研究で推進される時空間的に疎になりがちな乱流直接観測や、パラメタリゼーションを前提とした数値シミュレーションとの比較のみならず、同化手法を通じた混合とその長期微小変動との関係を理解する基礎的解析として寄与でき、相互比較を通じてより統合的な海洋亜表層の循環・変動の理解を目指す。

図1: 観測データから捉えられた北太平洋等密度面上の変動の一例, 約42°N, 27.4σ等密度面を西から東(横軸)に伝搬する(縦軸:年)塩分偏差。東側で偏差が小さくなっているようにも見受けられ拡散過程の介在が示唆される

図1: 観測データから捉えられた北太平洋等密度面上の変動の一例, 約42°N, 27.4σ等密度面を西から東(横軸)に伝搬する(縦軸:年)塩分偏差。東側で偏差が小さくなっているようにも見受けられ拡散過程の介在が示唆される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


纐纈

 

研究代表者:

纐纈 慎也

国立研究開発法人海洋研究開発機構 主任研究員 海洋物理