近藤 能子

親潮・黒潮およびその源流域における鉄輸送への有機リガンドの寄与の解明

研究概要

鉄は海洋生物生産や物質循環の鍵となる栄養物質と考えられているが、その分布や生物利用能は現場の水温、pH、酸化還元状態や溶存有機物との錯形成によって決まる化学的存在形態に制御されている。すなわち、海洋の鉄の分布を決める輸送メカニズムや植物プランクトン増殖への影響を明らかにするためには、鉄濃度そのものだけではなく、それを制御する「化学的存在形態」を把握することが重要になる。一般的に、海洋表層など酸化的環境下における海水中の鉄の溶存鉄の大部分は、熱力学的に安定な三価鉄(Fe(III))が溶存有機物中の天然有機リガンドと錯体を形成した「有機錯体鉄」として存在すると考えられている。海水中に存在する天然有機リガンドにはこれまで腐植物質、バクテリアが放出する有機化合物、植物プランクトン細胞が動物プランクトンによる捕食やウィルスによる溶解等の作用を受けて滲出される有機物、多糖類等が挙げられ、海水中ではこれら様々な化学式・立体構造を持つ有機リガンドが混在している。故にこれらの天然有機リガンドが「どこから」「どれくらいの規模で」供給・輸送されているかを明らかにすることが海洋鉄循環の解明のための課題となっている。本研究は、この天然有機リガンドについて、その存在量と錯形成能を西部北太平洋親潮・黒潮およびその源流域で調べ、当海域の鉄の供給過程と海洋鉄循環における有機リガンドの重要性について明らかにすることを目的としている。

図1近藤

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


近藤

 

研究代表者:

近藤能子

長崎大学水産 環境科学総合研究科(水産)助教 化学海洋学

 

 

 

 


連携研究者:武田重信(長崎大学水産・環境科学総合研究科(水産)・教授・生物海洋学)

連携研究者:西岡純(北海道大学・低温科学研究所・准教授・化学海洋学)

連携研究者:小畑元(東京大学・大気海洋研究所・准教授・海洋地球化学)