研究概要
珪藻は、海水の混合が盛んで、下層から表層への栄養塩が豊富に供給される沿岸域・湧昇域における主要な基礎生産者であり、北太平洋西部亜寒帯域の親潮域では、外洋域でありながら沿岸域の局所的なブルームに匹敵する高密度の珪藻ブルームが春季に広域にわたり形成される。この大規模な珪藻ブルームにより、親潮域では高い生物生産が維持され、世界有数の漁場が形成されている。さらに珪藻類は、シリカを含んだ細胞壁により沈降するため、表層中の二酸化炭素を光合成により吸収・固定した炭素を深層へ輸送する働きがある。この働きにより珪藻ブルームが形成される北太平洋西部亜寒帯域は、全球レベルで重要な大気中二酸化炭素の吸収源ともなっている。
近年になり、親潮域周辺海域の春季珪藻ブルームの形成維持には、鉄分を含む豊富な栄養塩類の供給プロセスととともに、供給された栄養塩を効率的に利用し活発に増殖できる珪藻種がブルーム形成時に供給され、水塊の混合とともに増殖するプロセスが不可欠であることが示唆されてきた。
本研究は、親潮域春季珪藻ブルーム形成を珪藻各種個体群の動態に着目し、ブルーム形成期の珪藻各種の細胞供給過程と増殖過程の二点を明らかにすることにより、ブルーム形成機構とその長期変動過程の解明を目指す。
研究代表者:
桑田 晃
国立研究開発法人水産研究 教育機構 東北区水産研究所 グループ長 海洋生態学
連携研究者:
冨樫 博幸
国立研究開発法人水産研究 教育機構 東北区水産研究所 任期付研究員 海洋生態学
連携研究者:
田所和明
国立研究開発法人水産研究 教育機構 東北区水産研究所 主幹研究員 海洋生態学
協力研究者:
渡辺 剛
国立研究開発法人水産研究 教育機構 東北区水産研究所 研究支援職員 海洋生態学