研究概要
生態系やそれにかかわる物質循環には、表層に近い海面混合層直下の混合が重要となる。本研究では、この海洋上層部で働く混合の素過程の一つである「渦と内部波の相互作用」に着目する。
渦による流れは通常上層ほど強く、この相互作用は表層近くの鉛直混合を促進する。しかし、従来の研究は扱いやすい一部のパラメタ領域のみを対象としており、その範囲外については現実に頻繁に生じているが定性的にも分かっていない。そこで本研究は、「渦と内部波の相互作用」を広いパラメタ領域で調べ、相互作用により混合が促進されうる場所の分布を見積もることを目的とする。
具体的な研究は下図のように計画している。
本研究は、混合と栄養塩循環・基礎生産のリンクの強化を通し当該領域の推進に貢献する。さらに、海流や渦活動の長期変動が混合の強さや分布を変動させうることから、海洋の内部力学による混合の長周期変動、ひいては混合と海洋循環のフィードバックの可能性という新たな研究に発展しうる。
中村知裕
北海道大学低温科学研究所 講師 海洋物理学
http://wwwoc.lowtem.hokudai.ac.jp/~nakamura/
研究協力者:
伊藤薫
北海道大学大学院環境科学院 博士課程 海洋物理学