OMIXには海洋学に関連する物理学,化学,生物学を専門とする多くの学生・若手研究者が所属しており,若手メーリングリストには現在76名の方にご登録いただいております。
そこで,分野の垣根を越えた若手交流を目的としたサマーセミナーを開催いたしました。
第一回新海洋混合学OMIX YMRサマーセミナー
YMR:(Young Mixing Researchers)
日程:2016年9月22日(木)~24日(土)
会場:支笏湖国民休暇村 会議室(〒066-0281 北海道千歳市支笏湖温泉)
世話人:西川 はつみ, 佐伯 立(北大低温研)
北海道大学低温科学研究所 西川はつみ・佐伯 立
OMIXに関係する若手研究者の交流の場を設ける目的として、OMIXプロジェクト全面サポートのもと、第一回サマーセミナーが北海道・支笏湖で開催されました。現在、OMIXの若手会のリストには80名を超える登録があります。初めての開催ということもあり、どのくらい参加者が集まるのかは未知数でした。私達が参加を呼び掛けるにあたって意識したのは、「【海洋混合学】という名のもとに分野の垣根を越えてたくさんの若手研究者の方々に集まってもらいたい!」という部分でした。幸い、参加者は物理・化学の分野がそれぞれ半々の割合で、30名強の方々が集まることになりました。プログラム編成にあたっては、事前に発表内容を含むタイトルを送って頂き、海域や内容を考慮しできるだけ物理ベースと化学ベースの発表が交互にくるように、3つのレクチャーと5つのセッション、2つのナイトセッションを設け、長めの自己紹介を含めて参加者のほぼ全員が発表する形をとりました。また、各セッションの座長は今後を担う若いB4や修士の学生の方々にお願いしました。
まず、最初の物理のレクチャーでは、安田先生から乱流の基礎知識を踏まえて乱流を測って分かることを丁寧に講演していただきました。その後は、松村先生から日本の海洋数値シミュレーションの現状と非静静力学モデルや粒子追跡を使った混合過程の理解に向けた取り組みの紹介がありました。レクチャーの最後は、西岡先生から物質循環の視点から生物生産に関わる現象を理解する取り組みについて講演して頂きました。 若手の発表では、北極、北太平洋、亜熱帯域、東シナ海など極域から中高緯度の話や、また、海底から表層に至る話が良く混ざりあった学際的な発表会になったと思います。 ナイトセッションも1日目の少し長めの自己紹介に始まり、2日目の力学やガス交換といった多彩な話題が食事後の自由な雰囲気の中で行われました。また、ナイトセッション後も話は尽きず、深夜遅くまで様々な話題で盛り上がりました。
やや詰め込み過ぎた印象はありましたが、いざ蓋を開けてみると、初日、2日目と天候は優れなかったものの支笏湖湖畔の開放的な雰囲気の中で最終的に非常にうまく収束したという印象が強く、全日程を通してOMIXの掲げるメインテーマを自然と意識した有意義なセミナーになったと感じました。 特に、若手研究者同士の横のつながりを強く実感できたのは大きかったと思います。若手の中でも既に一戦級で活躍されている方々を、セッションリーダーという形で各セッション冒頭に配置しました。セッションリーダーの皆さんには、文字通りサマーセミナーそのものを牽引して頂くことになったと思います。それに対して、若手全体の意見交換という意味では、学生からの発言が少なかった点は今後の課題かもしれません。それでも、総合討論の段階で一人ひとりがそれぞれしっかりと意見を持ち感想を話すことができたことは今後のサマーセミナーに繋がる部分だったと感じています。
私達世話人の至らなかった部分は多々ありましたが、それを参加者全体でカバーして頂きました。お陰様で、最終日は良い天気の中集合写真に収まって今年度のOMIXサマーセミナーを締めくくることができました。参加者及び関係者の皆様には、この文面をお借りして感謝を述べさせて頂きます。来年度は西日本開催ということが内定しましたので、ぜひ西日本で活躍中のたくさんの若手の皆様にも気兼ねなく自由に参加して頂きたいと思います。ゆくゆくはこのサマーセミナーによって、OMIXグループ全体の底上げに繋がっていけばと期待せずにはいられません。
■1日目 9月22日(木) 14:20-17:20 国民休暇村 会議室
14:00-14:20 集合, 部屋割り等
14:20-14:30 サマースクール趣旨説明(西川はつみ 北海道大学低温科学研究所)
レクチャー (座長 金子)
14:30-15:10 安田一郎 東京大学大気海洋研究所
「混合学レクチャー (物理)」
15:10-15:50 松村義正 北海道大学低温科学研究所
「日本の海洋モデル開発の現状・今後と非静力学モデルkiancoの紹介」
15:50-16:00 休息
16:00-16:40 西岡純 北海道大学低温科学研究所
「混合学レクチャー (化学)」
16:40-20:00 入浴 ・ 夕食 ・ レクレーション
ナイトセッション1.(前半) (座長 岡田)
20:00-20:40 自己紹介 その1 (岡田さん, 菊池さん, 柴野さん, 塚田さん)一人10分
20:40-20:50 休息
ナイトセッション1.(後半) (座長 中川)
20:50-21:20 自己紹介 その2 (石山さん, 川崎さん, 後藤さん)一人10分
21:20-21:30 自己紹介 その3 (その他の皆様)
21:30- フリーディスカッション
2日目 9月23日(金) 09:00-17:20 国民休暇村 会議室
セッション1. (座長 菊池)
09:00-09:30 田中雄大 東京大学大気海洋研究所
「ベーリング海南東部陸棚縁辺域での溶存鉄鉛直輸送に関わる潮汐混合 / 千島列島ブッソル海峡でのグライダーによる潮汐混合観測」
09:30-09:55 原拓冶 東京大学大気海洋研究所
「北太平洋、ベーリング海およびチャクチ海における表面海水中の希土類元素およびネオジム同位体比の分布に関する研究」
09:55-10:20 平野洋一 北海道大学大学院環境科学院
「Bering Slope Currentとshelfbreak付近の不安定性」
10:20-10:30 休息
セッション2. (座長 柴野)
10:30-11:00 近藤能子 長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科
「夏季西部北極海における微量金属の輸送メカニズム」
11:00-11:25 中川一成 北大院水産 北大水産学部
「アナディール湾-チャクチ海の海洋構造」
11:25-11:50 西川はつみ 北海道大学低温科学研究所
「漂流ブイで観測された北太平洋移行領域の流動構造」
11:50-14:30 昼食・休暇村周辺散策
セッション3. (座長 立松)
14:30-15:00 三角和弘 電力中央研究所 環境科学研究所
「海洋の鉄循環のモデリング」
15:00-15:25 金子拓郎 北大院水産 北大水産学部
「西部北太平洋亜寒帯域の基礎生産量とオホーツク海の海氷生成量の関係」
15:25-15:50 La Kenya E. EVANS 北海道大学大学院環境科学院
「Fe, Mn, Cd and Pb Quantitatively Analyzed from Sea Ice」
15:50-16:00 休息
セッション4. (座長 塚田)
16:00-16:30 川口悠介 JAMSTEC
「北極海の中規模渦内での乱流混合:「みらい」による現場観測」
16:30-16:55 漢那直也 北海道大学 北極域研究センター
「オホーツク海表層の鉄濃度を⾼める海氷融解過程」
16:55-17:20 佐伯立 北海道大学低温科学研究所
「アイスバンドパターンの形成メカニズム」
17:20-20:00 夕食 ・ レクレーション
ナイトセッション2. (座長 柄沢)
20:00-20:10 自己紹介 その4 (柄沢さん)10分間
20:10-20:35 伊藤薫 北海道大学大学院環境科学院
「渦と内部波の相互作用」
20:35-21:00 立松俊和 北海道大学水産科学院
「西部北太平洋における光分解性ガスの鉛直分布」
21:00-21:30 唐木達郎 北海道大学低温科学研究所
「夏季の沿岸流の調節過程」
21:30-21:40 休息
21:40- フリーディスカッション
■3日目 9月24日(土) 09:00-12:00 国民休暇村 会議室
セッション5. (前半) (座長 牧)
09:00-09:25 藤田裕也 長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科
「東部東シナ海陸棚上における亜表層クロロフィル極大の短時間変動と硝酸塩躍層の関係」
09:25-09:50 光川祐平 北海道大学大学院環境科学院
「太平洋の熱・塩分収支のトレンドが赤道水温躍層に与える影響」
09:50-10:00 休息
セッション5. (後半) (座長 藤田)
10:00-10:25 牧和幸 北海道大学大学院環境科学院
「東シナ海・黒潮域における硝酸塩・鉄の分布」
10:25-10:50 桂将太 東京大学大気海洋研究所
「太平洋亜熱帯域における表層塩分の構造と変動」
10:50-11:00 休息
11:00-12:00 総合討論・オブザーバーコメント(来年度に向けて) (佐伯立 北海道大学低温科学研究所)
12:00 解散