日高 清隆

黒潮周辺海域におけるカイアシ類の分布・再生産速度と海洋混合との関係の解明

研究概要

 海洋の生態系では、それを構成する生物の種組成や分布量が環境の変動の影響を受け数十年の間に変動していることが知られており、世界の各海域で起きている魚種交替もその反映であると考えられています。海洋混合による栄養塩供給過程の変動はこれらを説明する有力なプロセスですが、それにより生態系がどのような変動を経験してきたかについては充分な知見が得られているとは言えません。

 動物プランクトンは海洋生態系で二次生産者の位置を占めており、水産資源生物の餌料としても重要です。動物プランクトンの試料は比較的場所をとらず、ホルマリン固定による試料の長期保存が可能なため、研究機関によっては長期間(1960年代〜)の試料を利用できる状態にあります。

 この研究課題では、主に中央水産研究所とその関係研究機関が保有する動物プランクトン試料とデータを利用し、黒潮周辺海域で海洋混合が動物プランクトンの生産に与えている影響を明らかにしていきます。主な研究材料となるのは、広範囲かつ長期間にわたるプランクトンネットの試料です。これらは主要魚種の産卵量を推定することを目的に観測されたものですが、魚卵を同定・計数した後に動物プランクトン研究の材料となります。一部については湿重量やカイアシ類の生物量が測定済みであり、これらを材料とし、混合による栄養塩供給が促進されていると考えている海域の周辺で、その影響を分析します。また、これらの試料に含まれているカイアシ類の生殖腺を分析することで、カイアシ類の産卵速度を推定することを予定しています。これにより、例えば混合が活発な海域の下流でカイアシ類の分布密度が高かった場合に、生物生産が実際に高くなっているかどうか実証することが可能になります。これらの材料・手法を利用することで、海洋混合が黒潮周辺の動物プランクトン生産にどのような影響を与えているのかについて、そのプロセスも含めて出来るだけ具体的に明らかにしていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



研究代表者:

日高清隆

水産研究・教育機構 中央水産研究所 海洋・生態系研究センター モニタリンググループ 主任研究員 海洋生物学

[総括・現場観測およびデータ解析]*

http://nrifs.fra.affrc.go.jp/ResearchCenter/3_FOME/index.html

 


 

連携研究者:下出信次

横浜国立大学大学院 環境情報研究院付属臨海環境センター 准教授 海洋生物学  [カイアシ類の産卵速度の推定]

http://www.mmcer.ynu.ac.jp/shimo/my_site/Welcome.html