米田 道夫

マサバとマイワシの耳石を利用した生息環境履歴データバンクの開発

研究概要

 我が国周辺海域のマサバやマイワシは数十年周期で資源が大きく変動することが知られており、これは大気・海洋環境の変動と関連があることが示されています。しかし、これら水産資源と海洋環境の関係には未だ不明な点が多く、その関連性の解明が急務になっています。マサバやマイワシでは、発育初期の生残が資源変動に影響を及ぼすと考えられることから、仔稚魚がどこで生まれ、どこで成育したのかといった、生息環境履歴を把握することがそれら資源と環境の関係を解明する鍵になります。

 魚類の耳石は個体の成長に伴って成長輪が形成されるとともに、その安定同位体比や微量元素には生息環境の履歴が刻み込まれています。耳石の酸素同位体比(δ18O)は生息環境の水温や塩分に、炭素同位体比(δ13C)は餌条件や代謝にそれぞれ影響を受けると考えられています。このため、例えば、耳石の核から縁辺までのδ18Oの変化から水温情報を引き出すことによって、個体が生まれてから採集されるまでの分布・回遊履歴を推定することが可能になります。しかし、耳石のδ18Oと水温の関係やδ13Cと摂餌の関係などの情報を正確に読み取るには、その裏付けとなる実証実験を伴うことが不可欠です。

 本研究では、マサバとマイワシの分布・回遊の解明に資する生息環境履歴データバンクの開発を目的として、飼育実験に基づいて、δ18Oに及ぼす水温の影響やδ13Cに及ぼす餌条件の影響などの解明に取り組みます。各種実験で得られた耳石標本は、本研究領域で開発された耳石高解像度同位体分析システムを利用しながら共同で解析を進めます。これにより、マサバとマイワシ天然魚の耳石安定同位体比から環境情報を復元することの妥当性が示されることになり、個体の成長・回遊推定の精度が格段に向上することが期待されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

研究代表者:

米田道夫 国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所(伯方島庁舎) 主任研究員 海洋生態学

 

 

 


連携研究者:入路光雄 国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 

連携研究者:中村政裕 国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所(伯方島庁舎)

研究協力者:太田健吾 国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所(伯方島庁舎)

研究協力者:山下貴示 国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所(伯方島庁舎)

研究協力者:竹島 利 国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所(伯方島庁舎)